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2011.06.14 Tuesday / - / スポンサードリンク

夏の終わり

照りつける、と言うにはもう随分やわらかくなった光が
点々と浮かぶ小さなはぐれ雲を真白く輝かせていた。
大きな樹の枝から見渡す草の海は今日も青々としているが、
その海を通り、あとに小さな波を残していく透明な竜は
昨日までのそれと違い、微かに月の色を纏っているように見えた。

「――ふぅ」
空の一点へと視線を上げ、
オレンジ色の尻尾を風に遊ばせたまま獣は小さく溜息をついた。
すぐ隣に座ったよく似た姿の獣が、その溜息に振り向く。
「どうしたの?」
「なんだか淋しいな、って、思って」
「……ボクがここにいるのに?」
視線も動かさずに答えたオレンジの獣に、
隣の獣は憮然と言うよりは不思議そうな表情で訊き返した。
「あ、そうじゃなくて……ええっと、
 今日はずいぶん涼しくて、お日様が遠くに見えるから」
「そっか、ほんとだ」
オレンジの獣が少しだけ慌てた様子で訂正すると、
隣の獣も空へと視線を移し、頷いた。

太陽と、光を受けて煌めく小さな星々がゆっくりと空を流れる。
風が次々に草原を渡り、大樹の枝を穏やかに揺らしていく。
二人はしばらく枝に座ったまま、空と、草の海を眺めていた。

「おーい! もう準備はじまってるよー!!」
雲が少しだけ金色を帯びはじめた頃、不意に樹の下から大きな声がした。
見ると、星葡萄の蔓と光水晶を両手に抱えた赤い獣が二人を呼んでいる。
「あ……」
「そっか、明日は」
二人は思わず顔を見合わせ、声を揃える。
「「星狩りのお祭り!」」

村の広場の方では既に村人たちが集まって、
次の季節を迎える祭りの準備に取りかかっているのが見えた。
赤い獣は大樹の幹伝いに下りて来た二人に荷物を半分ずつ渡し、
すぐに来てね、と言い残すとまた慌ただしく広場へ走っていった。

「……淋しいばっかりじゃなかったね」
「うん」
二人はもう一度空を見上げ、笑顔を交わすと
すぐに赤い獣のあとを追って駆けだした。
誰もいなくなった大樹の枝で、透明な竜が二人を見送っていた。



とあるサイトで見つけた物語の種「夏の終わり」から。
投稿してきたんだけど被っちゃってました。あわわ(*ノノ)
久々に文章を書いたし、ここにも貼り付け!
だけど、2つ前の記事も同じテーマだったね。(おーい

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