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2011.06.14 Tuesday / - / スポンサードリンク

猫の夢

「――くぁ」

午後の旅宿の空き部屋に、小さな欠伸の泡ひとつ。
長い尻尾の黒猫ひとり、出窓の縁に腰掛けて、滲んだ空に背を向けて。

「……みぃ」

振り返り、呟き。雨音。
小道は水底、木立は踊る。色とりどりの無彩色。

ごろん。

窓枠ひとつに隔てられ、綿の客間は別世界。
硝子瓶には紅の花。見上げて寝そべり、暫し微睡み。

――すぅ。

やがて水音は遠ざかり、雨上がり、緑の香り。
雨雲は地平線、風が運んだ夏の空。窓辺に陽射し、空には淡く虹の帯。

「――みぁ、」

彩雲渡る猫の夢、目醒めた部屋は紅、朱、黄金に緑青、紫藍。
花瓶の小さなひび割れに、跳ねた光も七色に。

「…………」
「にぁ」

開いたままの扉の影に、三日月尻尾の白猫ひとり。
七分間の彩りを、踏み越え横切り南の窓へ。音もなく。

「みぃ」
「にぃ」

午後の旅宿の空き部屋に、小さな欠伸の泡ふたつ。
軒先落つる雨滴、硝子を透した虹も散り。



遠く風鈴、夏の夕暮れ。



----


「割れた花瓶の向こう側」
「滴したたる雨の後」
「あくびがうつる猫の宿」
フレーズお題、三題ミックス。でした。
ゆったり過ぎる夏のほんわり時間、だいすき。

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